Date. 2010/11/2

所長の一言②~カトウ君の事~

 

カトウ君の事

  この歳になればいろんな人との出会いや別れを体験してきたが、特別忘れられない人も幾人かいる。その中で学生時代に出会った、最高にユニークな後輩の話をしたいと思う。

  カトウ君、同じ体育系のクラブ(ワンダーフォーゲル部)の2年後輩であったが、浪人生活が長く、歳は私と同じ。福島県の有名進学高校を卒業した・・・らしい。彼の専攻は物理であり、彼に勉強を教えてもらった記憶もある。

  あの頃の学生は風呂付アパートなんてものは贅沢で、みんな銭湯に通っていた。

 毎日風呂に行く金も無く、夏はよく流し場で頭などを洗っていた時代である。

 それでも2~3日に一回は友人を誘って銭湯に行ったものである。

 でも、カトウ君だけは極端な風呂嫌いで、まず自分から銭湯に行く事はなかった・・・。

  だんだんと彼の髪の毛は整髪料も付けていないのに油(?)できっちりと固まり、風が吹いても決して乱れる事が無い状態までに変化してくるのであった。

  アパートが近い事もあり、時々私のアパートに遊びに来ては酒を飲んでいたので、この時とばかり強制的に銭湯に連れていくのである。

 嫌がるカトウ君を裸にし、まず頭を洗う儀式にはいる。お湯を頭からぶっかけると、子供が恐怖で息が出来ない状態と同じように「うっ!うっ!う・・・」と苦しそうな表情を見せるが、かまわず続ける。そのまま背中を洗ってやり、前は自分で洗えと・・・。今考えると、入所施設の入浴介助である。

  洗濯も、歯磨きもしないカトウ君であった。衣服を脱がし洗濯機にぶっ込んだGパン、すすぎをするたびに水の色が汚れてくるのにはいささか驚いた。

  ニコッと笑う憎めない顔は最高だが、黄色く輝く「歯」は恐ろしくて誰も近づく事が出来ない程の存在感があった。

  いろんな人がいて「普通の世の中」だと思うが、カトウ君、キミは今どこで何をしているのだろう・・・・。また会ってみたい人である。

< ぽけっと所長 横尾正人>

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